税務調査で”最初に聞かれる質問”には理由がある

~調査官の意図を完全解説~

税務調査官は企業に到着すると、まず最初にいくつか質問を投げかけます。実はこの「最初の質問」こそが、調査の方向性を決定づける最重要ポイントなんです。

調査官は雑談のように質問をしますが、その裏には明確な意図があります。最初の回答次第で、調査の深度が大きく変わることも珍しくありません。

調査官は、雑談で社長をリラックスさせ、話をしやすくするという目的があるのですが、同時に重要な情報を収集しているのです。

本記事では、税務調査官が最初に聞く質問の”本当の意味”を、実務的な視点から徹底解説します。

質問①:「経理体制はどのようになっていますか?」

調査官はこの質問を通じて「内部統制の強度」を判断します。

調査官が知りたいこと

  • 担当者は何人か
  • ダブルチェック体制があるか
  • 役員が経理に関わっているか
  • 経理担当者の経験年数

経理担当者が1人で、チェック体制がないと分かると、調査官は「ミスが多い可能性が高い」と判断し、細部を深掘りします。

【実例】ある卸売業X社のケース

X社の税務調査で、調査官が最初に「経理体制はどうなっていますか?」と質問しました。社長は「経理は1人で、全て任せています。チェックは特にしていません」と正直に回答。

調査官はすぐに「では、経費の承認フローは?」「役員の支出はどう処理していますか?」と深掘り。結果、役員の私的支出が経費に紛れ込んでいるケースが複数見つかり、約150万円の追徴課税となりました。

適切な回答例 「経理担当者は1名ですが、月次で管理部長がチェックを行い、社長も残高試算表を確認しています。また、外部の税理士とも月次で打ち合わせをしています」

質問②:「売上はどのタイミングで計上していますか?」

これは調査官が最も知りたい情報のひとつです。

売上計上は税務調査の大テーマであり、基準が曖昧だと深掘りされます。

調査官が確認していること

  • 納品日で計上しているか
  • 検収日で計上しているか
  • 役務提供完了日で計上しているか
  • 請求書発行日で計上しているか

この回答が曖昧だと、「利益調整している可能性」を疑われます。

【実例】ある建設業Y社のケース

Y社の社長は「売上計上は…だいたい納品した時ですかね。でも請求書がまだの時は翌月になることもあります」と曖昧に回答。

調査官は「基準が統一されていない」と判断し、3年分の売上計上タイミングを全てチェック。期ズレが複数発見され、約300万円の追徴課税となりました。

適切な回答例 「当社は検収日を基準に売上を計上しています。顧客から検収書を受領した日付で売上計上し、その基準は社内で統一しています」

質問③:「経費精算の流れを教えてください」

ここで調査官は「社長の私的支出が紛れ込んでいないか」を探っています。

調査官が確認していること

  • 誰が承認するのか
  • 経費の用途説明は十分か
  • インボイス登録番号はチェックしているか
  • 領収書の確認体制はあるか

社長が経費精算を一括で承認している企業は、特に疑われやすいです。

【実例】ある飲食業Z社のケース

Z社では社長が全ての経費精算を承認していましたが、内容の確認は甘く、領収書に「お品代」と書かれているだけでも承認していました。

税務調査で内容を詳しく確認されると、社長の個人的な飲食や家族旅行の費用が複数含まれており、約180万円が経費から否認されました。

適切な回答例 「従業員の経費精算は、まず直属の上司が内容を確認し、その後、経理担当者が領収書とインボイス登録番号をチェックします。最終的に経理責任者が承認する3段階のチェック体制です」

質問④:「役員貸付金・借入金はありますか?」

ほぼ確実に聞かれる質問です。理由は、役員勘定は税務リスクの宝庫だからです。

調査官が疑っていること

  • 役員が私的費用を会社に負担させている
  • 返済計画のない貸付金
  • 個人と会社の資金混同
  • 役員賞与として認定できる取引

ここで不自然な説明をすると、後の調査で激しい深掘りが入ります。

【実例】ある不動産会社AA社のケース

AA社では役員貸付金が500万円ありました。調査官が「これはいつ発生したものですか?」と質問したところ、社長は「いつだったかな…たぶん3年くらい前です」と曖昧に回答。

調査官は「返済計画は?」と聞きましたが、「特に決めていません」との回答。結果、全額が役員賞与と認定され、約200万円の追徴課税となりました。

適切な回答例 「役員貸付金は現在ゼロです。以前は発生していましたが、金銭消費貸借契約書を作成し、適正な利率で利息を計上し、計画的に返済を完了しました」

質問⑤:「最近の経営状況はいかがですか?」

この質問は、「利益水増しや利益隠しの可能性」を探るためのものです。

調査官が確認していること

  • 売上が急増していないか
  • 苦しい状況で不自然な支出がないか
  • 資金繰りはどうか
  • 帳簿の数字と実際の経営状況が一致しているか

調査官は「数字の動き」と「会社の説明」の整合性を確認します。説明が曖昧な企業ほど疑われます。

【実例】ある製造業BB社のケース

BB社は前期に売上が急増していました。調査官が「売上が増えた理由は?」と質問したところ、社長は「まあ、色々頑張りました」と曖昧に回答。

調査官は不審に思い、取引先への反面調査を実施。架空売上が発覚し、重加算税を含めて約800万円の追徴課税となりました。

適切な回答例 「前期は新規取引先の開拓が成功し、売上が前年比130%になりました。特に○○業界向けの製品が好評で、△△社との取引が大きく伸びました」

質問⑥:「社内規程はありますか?」

旅費規程・役員規程・経費規程など、規程の整備状況=経理のレベルを表します。

調査官の判断基準

規程がないと、「経理は場当たり的に運用されている」と判断されます。

逆に、規程があり、説明できる企業は信頼度が高いため、調査は比較的スムーズです。

【実例】あるコンサルティング会社CC社のケース

CC社には旅費規程がありませんでした。調査官が「出張手当の基準は?」と質問したところ、社長は「特に決めていません。だいたいこれくらいかなと」と回答。

調査官は「基準がない」と判断し、過去3年分の出張手当を全てチェック。一部が過大だと判断され、約120万円が給与として認定され、源泉所得税の徴収漏れを指摘されました。

適切な回答例 「旅費規程、経費規程、福利厚生規程を整備しています。出張手当は役職別に金額を定めており、全従業員に周知しています」

最初の質問に”正しく答える”ための企業側の準備

調査官の質問には明確な意図があります。企業はこの質問に答えられるよう準備すべきです。

【1】経理体制を説明できるようにする

  • 担当者の人数
  • チェック体制の有無
  • 外部専門家の関与状況

を明確に説明できるようにしましょう。

【2】売上計上基準を明文化

社内で統一した基準を作ることで、説明が楽になります。

文書化の例 「売上計上基準書」

  • 商品販売:納品時点で計上
  • 工事契約:検収書受領時点で計上
  • サービス提供:役務提供完了時点で計上

【3】経費精算のフローを資料化

  • 用途説明の方法
  • 承認ルール
  • インボイス対応

などをフローチャートにまとめておくと良いでしょう。

【4】役員勘定の台帳整備

いつ発生し、返済計画はどうなっているかを記録しておきましょう。

役員貸付金台帳の例

  • 発生日
  • 金額
  • 理由
  • 返済計画
  • 利率
  • 返済実績

【5】社内規程の作成または見直し

特に旅費規程・福利厚生規程は必須です。国税庁や税理士会のサンプルを活用して作成しましょう。

税務調査の最初の質問に不安がある経営者の方へ

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具体的な内容

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  • 経理体制の整備アドバイス
  • 売上計上基準の文書化支援
  • 社内規程の作成サポート
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企業が税務調査の対象となる確率は約4%ですが、最初の質問への回答が曖昧だと、調査が長期化し、追徴課税のリスクが高まります。

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まとめ:調査官の”最初の質問”こそ最重要ポイント

調査官は最初の質問で、「この企業は整っているか?」を判断し、それによって調査の深さを決めます。

最初の回答が曖昧・統一されていない・資料がないとなれば、間違いなく調査は厳しくなります。

しかし逆に、しっかり説明できる企業は“短時間で終わる調査”につながります。

調査官が最初に聞く6つの質問

  1. 経理体制はどのようになっていますか?
  2. 売上はどのタイミングで計上していますか?
  3. 経費精算の流れを教えてください
  4. 役員貸付金・借入金はありますか?
  5. 最近の経営状況はいかがですか?
  6. 社内規程はありますか?

【今日からできるアクション】

  1. 経理体制を説明できるように整理する
  2. 売上計上基準を文書化する
  3. 経費精算のフローを図にまとめる
  4. 役員勘定の台帳を作成する
  5. 税務調査あんしん対策パックで想定問答集を作成する

これらを実践することで、あなたの会社は確実に「税務調査に強い企業」になります。