銀行はここを見る
~税務と財務のズレが企業評価を下げるメカニズムとは?~
企業にとって、銀行からの評価(信用)は経営の生命線です。
しかし、税務と財務の理解が不十分なまま決算を迎えると、「銀行評価が下がる決算書」が出来上がってしまうことがあります。
税務上のメリットだけを優先した結果、銀行が求める財務指標を損ねてしまうケースは非常に多いんです。
本記事では、税務と財務の「ズレ」が企業評価にどのように影響するのかを、実務的な視点から徹底解説します。
銀行が決算で見るポイントは”税務署”とは違う
税務署と銀行は、決算書の見方が全く異なります。
税務署が重視するポイント
- 売上計上の適正性
- 経費処理の適正性
- 役員勘定の処理
- インボイス対応
銀行が重視するポイント
- 返済能力
- 財務の安定性
- 利益の質
- キャッシュフローの安定性
税務署と銀行は、見ている世界がまったく違うのです。
税務上はOKでも、銀行ではマイナス評価になる例
次のような決算処理は、税務戦略としては問題ありませんが、銀行ではマイナス評価になります。
【1】役員報酬を低く設定しすぎる
銀行は「過度に低い役員報酬」を嫌います。
理由
- 生活費が足りず会社からの借入が発生しやすい
- 実態を反映していない
- 経営者のガバナンス不足と見なされる
【実例】ある製造業JJ社のケース
JJ社の社長は節税のために役員報酬を月額20万円に設定していました。しかし実際の生活費は月額50万円必要で、不足分を会社から借り入れていました。結果、役員貸付金が500万円まで膨らみ、銀行から「経営者のガバナンス不足」と判断され、融資の金利が引き上げられました。
【2】節税のために利益をギリギリまで圧縮
税務上は節税ですが、銀行から見ると「利益を出せない会社」という評価になります。
自己資本比率が低下し、融資条件が悪化します。
【実例】あるIT企業KK社のケース
KK社は毎期、広告費と交際費を駆使して利益をほぼゼロに抑えていました。税負担は少なかったのですが、新規事業のために融資を申し込んだところ、「3期連続で営業利益がほぼゼロ。収益力に疑問がある」として融資が否決されました。
【3】役員貸付金・借入金が膨らんでいる
銀行は、役員貸付金を「社長の私的利用」とみなします。
返済の見込みがなければ、「実質的に資産として評価しない」というケースもあります。
【実例】ある建設業LL社のケース
LL社では役員貸付金が1,000万円ありました。銀行は「返済の実態がない」と判断し、実質的な資産から除外。自己資本が減少したと見なされ、融資限度額が大幅に引き下げられました。
【4】短期的な利益操作
以下のような処理は、利益の質を低下させます。
- 決算直前の不自然な売上計上
- 過度な減価償却
- 節税保険の活用
銀行は「継続的な利益」を重視します。
銀行が重視する財務指標と、税務の関係
銀行が特に重視するのは以下の3つです。
①自己資本比率
自己資本比率は30%以上がひとつの目安とされ、10%未満の場合は返済余力に不安があると判断されます。
税務上は節税で利益を圧縮したいところですが、自己資本比率を悪化させると銀行評価が大幅に下がります。
自己資本比率の基準
- 30%以上:健全な企業
- 20%以上:まずまず
- 10%未満:要注意
【実例】ある小売業MM社のケース
MM社は節税のために毎期利益を圧縮し、自己資本比率が8%まで低下しました。新店舗出店のために融資を申し込みましたが、「財務の健全性に不安がある」として融資条件が厳しくなり、希望額の半分しか借りられませんでした。
②営業キャッシュフロー
節税のために無理に支出を増やすと、キャッシュフローが悪化します。
銀行は「現預金がどのくらいあるか」を最も重視します。月商の2~3か月分の現預金があることが望ましいとされています。
【実例】ある飲食業NN社のケース
NN社は決算月に大規模な店舗改装を一気に実施し、手元現金が激減しました。決算書を見た銀行から「急激なキャッシュアウト。資金繰りに問題があるのでは?」と懸念され、次回の融資審査で追加の担保を求められました。
③借入金依存度
過度な借入は返済リスクと判断され、将来の融資枠が縮小される可能性があります。
債務償還年数は15年が限界とされており、それを超える場合は資金繰りに懸念があると見なされます。
税務と財務を”両立”させるための4つの考え方
節税をしながら銀行評価を落とさないためには、税務と財務のバランスが不可欠です。
【1】役員報酬は”銀行が見て妥当な金額”で設定
銀行は、不自然に低い報酬を嫌います。
「会社に利益を残したい」「節税したい」という理由で報酬を下げすぎるのは逆効果です。
適正な役員報酬の目安
- 業界水準を参考にする
- 生活費を十分にカバーできる金額
- 会社の規模に見合った金額
【2】節税よりも”利益の質”を高める
銀行は以下を評価します。
- 継続的な利益
- 本業での利益(営業利益の黒字)
- 安定したキャッシュフロー
短期的な節税策は、かえって企業価値を下げる可能性があります。
【重要】 経常利益が黒字であれば、利息を払っても利益がプラスであるため、銀行は高く評価します。
【3】役員勘定はゼロに近づける
銀行は役員貸付金・借入金を非常に嫌います。
これは「経営者のガバナンス不足」とみなされるためです。
対策
- 役員貸付金は年内に返済
- 金銭消費貸借契約書の作成
- 適正な利率での利息計上
- 明確な返済スケジュールの設定
【4】決算前に”銀行評価シミュレーション”をする
決算後ではもう遅いため、決算の3か月前に財務指標を確認するのが鉄則です。
税理士だけではなく、財務に強い専門家によるセカンドチェックが効果的です。
確認すべき財務指標
- 自己資本比率(30%以上が理想)
- 営業利益の黒字
- 経常利益の黒字
- 現預金の残高(月商の2~3か月分)
- 役員貸付金の残高(ゼロが理想)
税務と財務の両立に不安がある経営者の方へ
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- 適切な節税施策のアドバイス
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企業が税務調査の対象となる確率は約4%ですが、適切な準備をしておけば、税務調査はスムーズに進み、節税と財務の両立も可能です。
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まとめ:税務と財務を分けて考える企業は成長しない
税務と財務のズレは、企業の信用力を大きく損ないます。
- 税務署対策(適正性)
- 銀行対策(信用力)
この2つは車の両輪であり、どちらかに偏った経営は不健全です。
税務だけに偏った節税思考を見直し、財務と税務の両立を図ることで、企業は安定的に成長することができます。
節税と銀行評価を両立させる4つのポイント
- 役員報酬は銀行が見て妥当な金額で設定
- 節税よりも利益の質を高める
- 役員勘定はゼロに近づける
- 決算前に銀行評価シミュレーションをする
【今日からできるアクション】
- 直近3期の自己資本比率を確認する(30%以上が理想)
- 営業利益と経常利益が黒字か確認する
- 現預金が月商の2~3か月分あるか確認する
- 役員貸付金の残高を確認し、返済計画を立てる
- 税務調査あんしん対策パックで節税と財務の両立戦略を専門家と一緒に立てる
これらを実践することで、あなたの会社は「税務にも強く、銀行からも信頼される企業」になります。
節税は大切ですが、それ以上に大切なのは、企業が持続的に成長できる健全な財務体質を作ることです。目先の節税にとらわれず、長期的な視点で経営判断を行いましょう。